明太鼓台

 
作品名 明太鼓台 完成年 平成23年
金糸の種類 金糸 布団締めについて 跳尾
飾り幕の名称 四つ幕 稲積山の桜と川の流れ
木花咲耶姫命
龍王神(雨の神)
高屋神社(上宮と稲積山)
掛け布団 龍  二龍戯珠の図
獅子 二獅転繍球の図
鳳凰 天下文明の図
麒麟 麒麟吐玉書の図
中幕の有無 重の段数 7段
太鼓のメーカー 太鼓の大きさ

作品への想い

 製作に当たり、布団締めと掛け布団に凝った手法を取り入れようと考えたのですが、製作途中で「そもそも立体とはいったい何なのか?」ということが頭に浮かび、じっくりと自問自答してみました。
その時に、自分がこれまで追及してきたもの、満足してきたものは立体ではなく、「盛り上げ」であること、立体とは空間を利用するものだということ、要するに、盛り上げた物の上に更に盛り上げた物を乗せるという見た目の分厚さが立体ではなく、ゼロの状態からはじまり、何%の立体感を表現することが出来るかが真の立体だということに気付いたのです。
実際、この明太鼓台の布団締めでは約50%近い立体感を出しています。
 この明太鼓台以降、私の考えは変わりました。立体の追及方法も変わりました。
もちろん縫い箔師として20年近く宗教美術に携わり、人間が丸くなったということもありますが、それ以外にも新居浜型太鼓台とは違う立体の追及とは何かと考えた時、この「空間利用」という事に初めて気付かせてくれたという事で、明太鼓台には非常に思い入れがあります。

布団締めについて

 阿吽の龍で跳ね尾の布団締めです。龍は昇天し、降雨をもたらす龍神信仰、龍神雨乞信仰からなります。
新調委員会から、動きのある布団締めが欲しいという要望がありましたので、従来のちょうさのものとは違う非常にうねりのある布団締めとするため、阿龍、吽龍の二龍は彫刻のような立体感と動きを追求し、通常より多くの鱗(差しウロコ)で一枚一枚丁寧に仕上げております。
厚みは25センチです。

四つ幕について

木花咲耶姫命

 高屋神社のご祭神である、木花咲耶姫をモチーフとしています。
お祭りが桜の時期に行われることと、桜の名所があることから、桜をテーマとし、地元の物語で構成しています。

高屋神社(上宮と稲積山)

 高屋神社の上宮と稲積山を表現しました。

龍王神(雨の神)

龍は昇天し、降雨をもたらす龍神信仰、龍神雨乞信仰から。

稲積山の桜と川の流れ

お祭りが桜の時期に行われるため、地元の桜の名所を表現しています。

掛け布団について

二龍戯珠の図

 二龍戯珠の図です。龍には王の意味があります。
二匹の龍が珠の周りを戯れる様子を表した図柄となっています。
この葉幕には桜の花をいれていませんが、花は咲くと散ってしまいます。
王が散るということは、世の中が不安定になるということにつながるという理由からです。

二獅転繍球の図

二獅転繍球の図です。獅子は権力を意味します。
二匹の獅子が刺繍の球を転がして、紐が結ばれるという行為から、夫婦円満を表しています。
さらに、家庭円満という意味も持たせています。
 明太鼓台の掛け布団には唐獅子の幕を入れるのが伝統であり、どうしても外したくないという事でしたので、本来ならば、四霊(麒麟、鳳凰、霊亀、応龍)とするところを、伝統との融合を図る為、霊亀の代わりに唐獅子としました。

麒麟吐玉書の図

 麒麟吐玉書の図です。
麒麟は世の中が安定した時に出てくる動物と言われています。
麒麟が玉と本を吐き出すという行為は、吉兆を意味します。
玉は宝という意味を持ち、本は賢い子供が育つという意味を表します。
 ちょうさのシルエットに上手く溶け合う事に主眼を置き製作しました。
厚みのない幕でもなく、逆に立体感を全面に出した幕でもない微妙なバランス感を出すことに気をつかいました。

天下文明の図

 天下文明の図です。鳳凰は麒麟と同様、平和な時代に現れると言われ、文化の高い、安定した世の中を願っています。
 製作技法においては、西洋のハンドクラフトで使われる「シャドーボックス」を取り入れました。
シャドーボックスとは同じ柄のものを複数用意して、何層にも積み重ねて立体を表現するものです。
鳳凰の尻尾を二重に重ね、奥行き感と立体感を追求しました。