岸之下太鼓台

 
作品名 岸之下太鼓台 完成年 令和4年
金糸の種類 純金糸 布団締めについて 跳ね尾 ・阿龍 ・吽龍
飾り幕の名称 上幕 倉稲魂神と五穀豊穣
吽形の山鷲と月
素戔嗚尊の疫病退散
阿形の海鷲と太陽
高欄幕 祐徳稲荷神社
狐の嫁入り、奉献塔にて
八坂の西楼門と子獅子
夫婦唐獅子と四季牡丹
中幕の有無 重の段数
右と左 昼提灯 正面と後ろ
太鼓のメーカー 太鼓の大きさ

欄間

内幕

布団締めについて

うねり巻尾の布団締め

三代目岸之下太鼓台の布団締め(高木縫氏製作)の特徴であるスタイリッシュなフォルムをベースに、金鱗合田縫師が岸之下太鼓台の躍動感を取り込み、うねりのある物へと昇華させた布団締めである。
製作中、関係者の間では他には無い岸之下だけのうねった巻尾と言うことで”うねり巻尾”と呼んでいた。
『正確には、この阿形の龍は蟠龍(ぱんりゅう)と言います』と合田縫氏。爪と牙には象牙を使用し、瞳はガラス製でできている。
龍の鱗は刺し鱗と言い一枚一枚を繋ぎ合わせている。
従来の刺し鱗と比較すると一枚の鱗の固定部分が3箇所と少なくし、浮き上がり感を出す事で、 生物味を表現している。また、内部の空洞化率を増加させる事で軽量化をも実現している。
鱗の裏には自治会全員の直筆で名前が記入されており、文字通り岸之下全員の思いが込められた布団締めとなっている。
前後の阿形の龍は滴状の宝珠を持ち、左右の龍は波紋状の宝珠とそれぞれで”対”となる。
金糸のゴールドに鱗の裏地の青が映え輪郭をはっきりさせ、 龍の巻き付く黒の羽子板は曲線をつけておりより体のうねりが強調される工夫がなされている。

阿龍

吽龍

上幕

倉稲魂神と五穀豊穣

萩岡神社の主神、五穀豊穣を司る倉稲魂神(ウカノミタマノカミ)とその使いである狐を中央に配置。
背景は五穀の植物を添え秋祭りの根源である五穀豊穣を祈念している。
また、全国の稲荷神社の主祭神であり、狐を使いとすることから、こちらの狐は、萩岡神社の狐(メス)となっている。
倉稲魂神の手に持っている稲穂は萩岡神社の御神体であり、本祭りでは萩岡神社に奉納された本物の稲穂を刺せるようになっている。
装束は従来一枚の布を幕に縫い付けていくところを、今回凹凸ごとに裁断することで、かなり手間をかけ細やかな表現を可能としている。
裏面の素戔嗚尊の系譜であり、背中を父親が守る形となる。

吽形の山鷲と月

口を閉じ松に留まることで阿吽の吽形であり、三・四代目の吽形の龍頭の流れを汲む幕である。
太陽に対する月、動(荒々しさ) に対する静(美しさ)となり、陰と陽の対比 関係における陰を表現している。
岸之下太鼓 台が萩岡神社をかき上げる優雅な様を体現している。
嘴は鼈甲(海亀の甲羅)を使用、鷲の金糸は色合いの異なるものを入れることで立体感を出している。
青年部からの提案により採用された幕の一枚。

素戔嗚尊の疫病退散

萩岡神社本殿東に位置し、岸之下の氏神であり、主神である素戔嗚尊(スサノオノミコト)を中心にした八岐の大蛇退治の様子である。
毎年七月に行われる祇園祭の神事である茅輪くぐりには、疫病を払う意味合いがあり、 素戔嗚命が伝えたとされている。
茅の輪を左上に配置し素戔嗚尊が、大蛇に見立てた疫病(このご時世だとコロナウイルス)に打ち勝つ様を表現している。古事記における倉稲魂神の父親であり、裏側から娘をしっかり守っている構図となる。
剣にはプラチナの糸を使用。このような人物の装束は従来一枚の布を幕に縫い付けていくところを、今回凹凸ごとに裁断することで、かなり手間がかかったが細やかな表現を可能としている。
『今後こんなに手の込んだことは遠慮したい』、また『髪の毛が乱れてしまったらヘアスプレーでセットしてね』と合田縫師。

阿形の海鷲と太陽

口を開き動きを付けた阿吽の阿形であり三・四代目の阿形の龍頭の流れを汲む幕である。
月に対する太陽、静(美しさ)に対する動(荒々しさ)となり、陰と陽の対比関係における陽を表している。
岸之下太鼓台のかき比べでの躍動感を体現した幕である。
嘴は鼈甲(海亀の甲羅)を使用、鷲の金糸は色合いの異なるものを入れることで立体感を出している。
青年部からの提案により採用された幕の一枚。

高欄幕

祐徳稲荷神社

萩岡神社と同じ倉稲魂神を主神として祭る祐徳稲荷神社。 佐賀県鹿嶋市にあり、右奥の懸造り(舞台造り)が本殿となる。
楼門は日光東照宮の修復職人達の手による陽明門を模したものであり、三・四代目岸之下太鼓台の陽明門を受け継ぐ幕である。
金鱗が得意とする平面的でありながら立体感を出す半立体な幕である。
屋根の瓦は一枚一枚手作業で縫い付けており、また、見た目以上に先代の幕よりも軽量化に成功している。

狐の嫁入り、奉献塔にて

岸之下に古くから伝わる飯尾家の奉献塔(宝篋印塔)と恋仲の狐達が 図柄となる。
萩岡神社の神の使いのメスが、一宮神社の狐(オス)と恋に落ちると言う伝承であり悪さばかりしていた一宮のオスが萩岡のメスと出逢いおとなしくなり、後に夫婦として二本の銀杏の木の守護神となった。
背景には、実際にある2本の銀杏の木、右下には銀杏の落ち葉を敷き詰めている。
篝火(かがりび)、和傘は婚姻の意味合いを示し、狐・傘・水たまりは『狐の嫁入り』という気象用語におけるお天気雨を表現している。
新調する幕の中で一番最初に下絵が出来、最も人気の幕である。

八坂の西楼門と子獅子

素戔嗚尊を主神とする祇園神社、その総本社である京都八坂神社の西楼門。
建物の瓦は一枚一枚手縫で取り付けられている。
左上の八坂の枝垂れ桜の先には鈴が付いており、太鼓の動きによって音が響き渡る。
右下の子獅子は夫婦唐獅子の子供となっている。
祐徳稲荷同様金鱗が得意とする平面的でありながら立体感を出す半立体な作りである。
萩岡神社本殿に太鼓台を持っていくと、ちょうど西面を向く幕となる。

夫婦唐獅子と四季牡丹

三代目・四代目岸之下太鼓台の唐獅子を継承する幕。
図柄としては、多くの太鼓台で採用されている唐獅子であるが、背景と唐獅子の輪郭が曖昧になりがちとなる点が課題であった。
背景右下から反時計周りに牡丹の四季を障子から覗かせることで、唐獅子の輪郭を明確にしている。
下部の結びは結(ゆい)と言い結婚を意味し、さらに岸之下の団”結”力を表している。
夫婦唐獅子(左:雌、右:雄)と子孫繁栄の象徴である牡丹を盛りこんだ子々孫々な一枚。