作品名 | 又野太鼓台 | 完成年 | 平成20年 |
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金糸の種類 | 金糸 | 布団締めについて | 跳尾 |
飾り幕の名称 上幕 | ・網師園(春、夏、秋、冬) | 飾り幕の名称 高欄幕 | ・鳳凰 ・麒麟 ・羅漢 ・川中島の戦い |
中幕の有無 | - | 重の段数 | - |
太鼓のメーカー | - | 太鼓の大きさ | - |
作品への想い
又野太鼓台は平成20年に新調お披露目を行いました。この年は、私の縫い箔歴の中でも最も印象的な年と言っても過言ではなく、中国蘇州における太鼓台飾り幕の生産能力がピークに達した時期であります。神速でありながら緻密という、蘇州の最高技術がいかんなく発揮され、又野太鼓台を含めて一年間に3台の太鼓台を製作することができました。
この又野太鼓台のテーマは「絆」です。
布団締めについて
自治会、新調委員会より、「先先代を踏襲して投げ尾の布団締めを」という要望を受けました。
従来のものとは少し違った雰囲気の物を作りたかったので、私が思う投げ尾の布団締めのアイデアを盛り込みました。
材質ですが、まず頭部をウレタン造形で製作しました。ウレタンならではの輪郭がハッキリした表情が印象的です。次にウロコは綿を採用しました。綿縫いではありますが従来の連続縫いではない、一枚一枚別々に縫った「差しウロコ」とし、緻密な作りとしております。綿の差しウロコはこの又野太鼓台が初めてだったと思います。
阿龍が抱える宝珠は新居浜型であれば同色の金糸もしくは金属なのですが、又野太鼓台はガラスを取り入れました。色も四面で違いをもたせ、赤、黒、白、青という四神に基づいた宝珠を抱えております。
また、布団締めの龍が巻きつく板も通常では平面の板ですが、又野太鼓台では曲面の板に巻きつく形として、より体のうねりを出す作りとしました。
宝珠 - 青
宝珠 - 赤
宝珠 - 白
宝珠 - 黒
上幕
上幕ですが、これまで誰も描いた事がない「景色」の図柄を取り入れよう、そしてその中にどのようにして「絆」というテーマを盛り込もうと色々と考えたのですが、その時フッと頭に浮かんだのは「絆」の中でも「人と人の絡み合い」でした。絡み合いの中には良い絡みもあれば悪い絡みもあります。単純にも複雑にも絡み合うものは何だろうと思ったときに、「網」を思い付きました。そこで、蘇州にある世界遺産の庭園「網師園」を上幕四面に取り入れました。
景色を忠実に描くだけではなく、庭園に訪れる「四季」を表現しました。また、数多くの唐獅子を散りばめ、唐獅子の絡み合いで、具体的に「親子」「師弟」「恋愛」「夫婦」「好敵手」の絆を描きました。また製作手法においては初めて樹木の表現に凝ってみました。
網師園-春
網師園-夏
網師園-秋
網師園-冬
高欄幕
鳳凰
高欄幕には前後に麒麟、鳳凰の図柄を取り入れました。絵画、彫刻においても麒麟と鳳凰は対で表現させる事が多いのですが、それはこの二つが現れる時は平和であるという意味があります。また単体で見ても麒麟、鳳凰共に四霊であり、鳳凰は夫婦の絆を表しています。
麒麟
前後に麒麟、鳳凰の図柄を取り入れました。絵画、彫刻においても麒麟と鳳凰は対で表現させる事が多いのですが、それはこの二つが現れる時は平和であるという意味があります。また単体で見ても麒麟、鳳凰共に四霊であり、麒麟はその現れるところに優れた子供が産まれるという言い伝えがあります。(ちなみにその優れた子供が麒麟児と呼ばれます)
羅漢
子供達と布袋さんが戯れる羅漢図です。この幕には子供は親が強制的に育てるものではない、子供の個性を伸ばさなくてはいけないという想いを込めました。それゆえ子供たちの髪型も全て変えて個々の特徴を持たせています。
布袋さんはおおらかな人柄であり、大きな袋を抱え人々の不満、辛いこと、我慢をその中に入れてしまいます。余談ですが、この袋は別名「かんにん袋」と呼ばれ、我慢していた怒りが爆発することを「堪忍袋の緒が切れる」といいますが、それはここからきています。
ニワトリとひよこも表現していますが、にわとりは多くの卵を産み子孫繁栄の意味があります。将来この地区を担う子供達がすくすくと数多く育って欲しいという、これまでにはない想いを込めました。またその横には花器の中に入った花を描き、見た目は綺麗で鮮やかだけど花器に入った花はいつか枯れる。これは表面的な美しさに過ぎない。本物ではない。やはり本質を見抜かなくてはならないという意味をこめました。麒麟、鳳凰、羅漢図は主に地域の絆と将来を背負って立つ子供達との絆を描いています。