垣生本郷太鼓台


作品名 垣生本郷太鼓台 完成年 平成11年
金糸の種類 手撚りの純金箔金糸(純金一号色) 布団締めについて 巻尾
飾り幕の名称
上幕
【神功皇后新羅攻め】
軍船の舳先に立つ武内宿彌
軍船(御座船)に乗った神功皇后と大矢田宿彌
朝鮮の新羅城
龍に乗った新羅王(波沙寝綿)
飾り幕の名称 高欄幕 龍と唐獅子の闘争  東(青龍)
神殿(金毘羅宮旭社) 北(玄武)
鷲と唐獅子の闘争  西(白虎)
神殿        南(朱雀)
中幕の有無 無し 重の段数 10段
太鼓のメーカー 太鼓正 太鼓の大きさ 2尺2寸

作品への想い

垣生本郷太鼓台は、新居浜型太鼓台のデビュー作です。
「本物」、「一級品」の太鼓台を製作して欲しいと依頼を受け、当時全く無名だった人間に製作の機会を与えてくださったことに深く感謝し、これまで独学で研究を重ねてきた技法、手法を思い切りぶつけ、最高級の太鼓台を製作すると心に決めて製作に取り掛かりました。
「本物」、「一級品」ということで金糸をはじめとする材料にもこだわり、「立体の表現の追求」をテーマに、従来から使用されてきた材料に加え、新たな素材も使用しました。
このように太鼓台への熱い想い、ひたむきさ、一生懸命さ、祭りに対する情熱等、これら全てを出し切り全身全霊で取り組んだ作品です。

こだわり

最初にこだわったのは金糸です。本物の金を含有した金箔を一本一本職人さんが手作業で撚りあげた、世界で唯一無二の最高級手作り金糸で幕を丹念に縫い上げました。
飾り幕においては、目玉には京都のガラス職人が作った、透明度の高い、歪みの少ない美しいガラスを使用しています。
また、躍動感のある人物を表現するため、人物の衣装には着物の帯地などを使用しています。
さらに、龍や唐獅子、鷲等の爪や牙、クチバシには、現在では非常に入手が困難になっている象牙や鼈甲(べっこう)等を惜しみなく使用しています。なかでも、布団締めや高欄幕「龍と唐獅子の闘争 東(青龍)」に使用されている象牙は肉厚で一際大きい物です。
それに加えて、上幕「朝鮮の新羅城」のところで写真を載せていますが、表からは見えない幕の裏地にもこだわり、着物の帯地を使用する等、高級感と品の良さを加えた飾り幕となっています。

布団締めについて

ウロコは従来であれば綿を使用します。しかし立体を追及する為に綿を高くして金糸を掛けると、組み立てた時に崩れ落ちてしまいます。そのため、樹脂板(ウレタン)を使用しました。樹脂板に切れ込みを入れて湾曲させ、切れ込み内には樹脂系接着剤を入れて補強を施しました。さらにこの上から布を張り、最後に金糸を掛けて重厚なウロコを製作しました。
また、このウロコは一枚一枚を別々に縫い、組み立て時に胴体、尻尾に固定するという「差しウロコ」方式を採用し、より立体的な表現としました。
頭の部分もウロコと同様でウレタン造形の物の上に布を張り、そして金糸を掛けて立体を追及しました。また頭の下の胴体部分も垂直に立ち上げました。このことにより布団締めの厚さは52㎝まで上げることができました。
次に昇り竜、降り竜4面、全く同じ物を作るという事で、固定にはボルトナットを使用しました。これは固定する位置を各4面同じすることで組み立て時に発生する誤差を無くすという目的で取り入れました。また金具の使用で増える重量の軽減を図る為、布団締めの内部は空洞としました。

上幕 神功皇后新羅攻め

軍船の舳先に立つ武内宿禰

上幕の図柄は「神功皇后の新羅攻め」で、先々代、先代から引き継がれた垣生本郷太鼓台の伝統ある図柄です。
先々代、先代の基本的構図を尊重し、細部に工夫を凝らしました。
この図柄は躍動感ある人物が配置されているのが特徴です。人物の衣装にこだわり、凝った衣装を着用させたかったのですが、今までの刺繍によるやり方ではそれは不可能です。そこで着物の帯地などを使用し、これまでにない個性的な衣装を着用させました。また人物の製作方法も従来のやり方ではなく、京都発祥の木目込み人形の手法を取り入れ、より立体感のある表現としました。
軍船の舳先の鳳凰のクチバシには鼈甲(べっこう)を、龍の牙や爪には象牙を、獅噛の牙には翡翠(ひすい)を使用しています。

軍船(御座船)に乗った神功皇后と大矢田宿禰

図柄は先代の踏襲ですが、ここでも人物の衣装に拘り、着物の帯地などを使用し、これまでにない個性的な衣装を着用させました。人物の製作方法も従来のやり方ではなく、京都発祥の木目込み人形の手法を取り入れ、より立体感のある表現としました。
軍船の龍の牙や爪には象牙を、獅噛の牙には翡翠(ひすい)を使用しています。

朝鮮の新羅城

図柄は先代の踏襲ですが、屋根の瓦は一枚一枚別々に縫い上げ、組み立て時に屋根に乗せて固定するという本物と同じ製作方法を用いました。門の獅噛の牙には玉石という翡翠(ひすい)を使用し、瓔珞(ようらく)には鼈甲(べっこう)で亀の形を表しました。

龍に乗った新羅王(波沙寝綿)

図柄は先代の踏襲ですが、ここでも人物の衣装に拘り、着物の帯地などを使用し、これまでにない個性的な衣装を着用させました。人物の製作方法も従来のやり方ではなく、京都発祥の木目込み人形の手法を取り入れ、より立体感のある表現としました。
龍の牙や爪には象牙を使用しています。

高欄幕

龍と唐獅子の闘争 東(青龍)

高欄幕の図柄も先代の図柄の踏襲ですが、それぞれの幕に四神を配しました。
龍の口の中に青龍を配しています。青龍は東方の守護神。龍の化身を正面に配することにより富を得るとされています。
龍及び唐獅子の牙や爪には象牙を使用しています。

神殿(金毘羅宮旭社) 北(玄武)

先代の踏襲で金毘羅宮旭社の図柄ですが、玄武を配しました。
屋根の瓦は一枚一枚別々に縫い上げ、組み立て時に屋根に乗せて固定するという本物と同じ製作方法を用いました。
玄武は北方の守護神。ヘビと亀をひとつにした神獣で、厳しい北風を防ぎ、繁栄と長寿の運をもたらすといわれています。
こちらの龍の牙や爪にも象牙を使用しています。

鷲と唐獅子の闘争 西(白虎)

先代の図柄の踏襲ですが、白虎を配しました。
白虎は西方の守護神。後門の白虎と言われ、睨みをきかし悪運を退散させるといわれています。
鷲のクチバシや爪には鼈甲(べっこう)を、白虎の牙及び龍の牙や爪には象牙を使用しています。

神殿 南(朱雀)

先代の図柄の踏襲ですが、朱雀を配しました。
屋根の瓦は一枚一枚別々に縫い上げ、組み立て時に屋根に乗せて固定するという本物と同じ製作方法を用いました。
朱雀は南方の守護神。翼で悪災をはらい、平安と福を招くとされています。
朱雀のクチバシには瑪瑙(メノウ)を使用しています。